【目次】
人生の最期を迎えるための準備として、終活は非常に重要です。その中でも身辺整理は、自分の持ち物や情報を整理し、後に残る家族への負担を減らすための大切な作業になります。
しかし、実際にやろうとすると身辺整理をどこから始めれば良いのか、具体的な手順がわからずに悩む人が多くいます。
物品や書類、デジタルデータなど、整理すべきものは多岐にわたります。選ぶ際の心理的な負担も少なくありません。こうした状況で身辺整理を進めては、気が重くなるのも当然です。
そこで今回は、「終活の身辺整理を進める手順」を紹介します。身辺整理をするにあたって知っておきたい「身辺整理のメリット」や「整理方法」、「意識したいポイント」も解説しているので、ぜひ参考にしてください。
終活の身辺整理とは
終活で身辺整理を始める前に、まず身辺整理について知っておきましょう。知識のあるなしで、取り組む際の意気込みや考えが大きく変わるためです。以下を見ていきましょう。
断捨離とは違う
大切な家族へ負担をかけない準備
自分の人生と向き合う大切な時間
断捨離とは違う
身辺整理と似ているものの、断捨離があります。一見すると似ているようにも感じますが、両者は大きく異なります。
終活の身辺整理は、単に不用品を処分することではありません。大切な家族がスムーズに手続きを進められるように、財産や持ち物、人間関係などを整理しておきます。
一方の断捨離は、自分にとって本当に必要なものだけを残し、快適な生活を送ることを目的としています。
家族と自分、どちらに比重を置いているかで大きく違うのです。
大切な家族へ負担をかけない準備
亡くなった後、遺族は遺品整理や相続手続きなど、想像以上の負担を背負います。1度でも家族を亡くした経験がある方なら、頷く部分も多いでしょう。
身辺整理をしておけば、そうした遺族の負担を軽減できます。大切な家族に感謝の気持ちを伝えられるようにもなるでしょう。
自分の人生と向き合う大切な時間
身辺整理を進める中で、これまでの人生を振り返り、大切なものに気付けます。財産や持ち物、人間関係を整理する中で、人生と向き合わなければいけないためです。
また、家族との思い出を語り合い、絆を深める機会にもなります。改めて自分の人生を見直すきっかけにもなるでしょう。
終活で身辺整理をする4つのメリット
終活で身辺整理をするメリットはたくさんありますが、その中でも特に重要な4つのメリットを紹介します。
家族への負担を軽減できる
心が軽やかになる
住みやすい環境を作れる
自分らしい最期を迎えられる
家族への負担を軽減できる
亡くなった後、残された家族は遺品整理や相続手続きなど、想像以上の負担を背負います。
特に以下の負担は非常に大きいので、身辺整理をしておくと家族のためになります。
遺産分割に関する揉め事
相続手続きにかかる時間と費用
遺品の仕分けや処分にかかる時間と労力
どれも場合によっては年単位でかかる可能性があるものです。生前に整理しておけば、残された家族への負担を大きく軽減できます。
心が軽やかになる
身辺整理で不用品を処分すれば住空間がスッキリし、掃除や片付けが楽になります。不要なものを溜め込んでしまう方は、思い切って捨ててしまうのも良いでしょう。
不用品の整理は、心の整理にも繋がります。整理しているうちに心が軽やかになり、前に向きになれる効果もあります。他には以下のメリットも。
住空間が広くなり、開放感を得られる
掃除や片付けが楽になり、家事の負担が減る
過去の荷物に囚われず、新しいことに挑戦できる
いずれも生活を豊かにしてくれるものです。
買って使わなくなったものは、想像以上に多くあります。身辺整理をきっかけに片付けてしまいましょう。
住みやすい環境を作れる
身の回りの整理整頓を進めると、安全で快適な住環境を作れます。高齢者にとって、荷物で溢れた家は、転倒やケガのリスクを常にはらんでいます。そうしたリスクをなくせるのは、大きなメリットです。
他にも、以下のような環境を整えられます。
掃除やメンテナンスがしやすい
快適な空間で心身ともにリラックスできる
住む場所が綺麗になれば、心も綺麗になります。心理的な負担を減らし、住みやすい環境で過ごせるようになるでしょう。
自分らしい最期を迎えられる
身辺整理では、自分の葬儀やお墓についても考えます。死ぬ前までに「こういう形でして欲しい」と希望を伝えておけば、家族への負担を軽減できるでしょう。
特に、後悔のない自分らしい最期を迎えるためにも、以下は重要です。
遺言状の作成
葬儀の形式(家族葬、直葬など)
お墓の種類(永代供養、納骨堂など)
終活で身辺整理をしておくことで、安心して過ごせるだけでなく、大切な家族への思いを形にできます。
自分の人生を最後まで演出するイメージで、身辺整理を進めていきましょう。
終活で身辺整理をする際の4ステップ
終活の身辺整理でどう進めていいのかわからない方は、以下の手順で進めるのがオススメです。
現状を把握する
エンディングノートを作成する
財産と所有物を整理・処分する
自分の葬儀の事前準備をしておく
Step1.現状を把握する
身辺整理をするには、まず現状を把握する必要があります。自分の財産や持ち物、人間関係などを整理しましょう。以下のような項目を把握します。
銀行口座や投資商品などの金融資産
不動産や車などの所有物
家族や友人との連絡先
加入している保険や会員証
これらの情報をノートやパソコンにまとめ、エンディングノートを作成しておいてください。身辺整理で使うので、手元に置いておくと後の工程をスムーズに進められます。
どのように作成するのか、次のステップで見ていきましょう。
Step2.エンディングノートを作成する
現状を把握できたら、エンディングノートを作成します。エンディングノートには、自分の希望や考えを書き残しておきましょう。具体的には、以下のような内容です。
葬儀やお墓に関する希望
介護や医療に関する希望
財産や持ち物の分配に関する希望
ペットがいる場合は、その後の世話に関する希望
エンディングノートは、家族が自分の意志を理解し、スムーズに手続きを進めるための大切な資料となります。
そのため、認知症や意識不明になったケースも考えて記載する必要があります。特に延命治療と臓器提供に関しては重要です。認知症で延命治療をどうするかを決めるのは、家族にとって大きな負担になります。全員で意見がまとまらない可能性もあります。
命や体に関しては、自分がどうして欲しいのかを明確に意思表示しておきましょう。
Step3.財産と所有物を整理・処分する
エンディングノートを作成したら、次は不用品は処分し、必要なものを整理しましょう。特に、以下のようなものは早めに整理しておくと楽です。
重要書類
思い出の品や写真
価値のある骨董品や美術品
処分に困る場合は、専門業者に依頼するのも1つの方法になります。特に価値のある骨董品や美術品は、家族が知らないと二束三文で売却される可能性もあります。
価値を共有しておくか、自分で処分するかしておきましょう。
Step4.自分の葬儀の事前準備をしておく
自分が亡くなった際の葬儀やお墓について、希望を伝えておくのも大切です。以下のような内容を、あらかじめ決めておきましょう。
葬儀の形式(家族葬、直葬など)
お墓の種類(永代供養、納骨堂など)
戒名や法名の希望
葬儀は亡くなってからすぐ準備に取りかからなくてはいけません。精神的に疲弊している家族にとって、大きな負担です。
しかしあらかじめ決めておけば、家族は慌てずに、希望に添った葬儀やお墓の準備ができます。送る側も送られる側も、理想の終わり方ができるでしょう。
終活の身辺整理で知っておきたい整理方法
終活で身辺整理をする際には、様々なものを整理する必要があります。ここからは特に重要な6つの項目について、整理方法を紹介します。
財産・貴重品
持ち物
人間関係
クレジットや口座などの契約関係
パソコンやスマートフォンなどのデータ
思い出の品や写真
財産・貴重品
終活でまず整理したいのが、財産や貴重品です。遺産相続時のトラブルを避けるためにも、真っ先に取りかかりましょう。
以下のように整理しておくと、家族にもわかりやすくなります。
銀行口座や投資商品:種類や場所をまとめて家族と共有
不動産や車:登記簿謄本や車検証を保管しておく
貴金属や宝石:鑑定書を作成しておく
重要な書類は信頼できる家族や弁護士に渡しておく
このような手続きをしておくと、遺族が混乱せずに対応できます。財産情報が整理されていると遺族の負担を大きく軽減できるため、できる限り進めておきましょう。
持ち物
身辺整理では、持ち物も重要になってきます。生活の見直しと整理もできるため、遺族への負担軽減以上のメリットがあります。
以下を参考に、整理を進めてみましょう。
服や家具:処分かリサイクルショップ
思い出の品や写真:データ化やアルバムでまとめる
大切な書類:種類ごとにわけてファイリング
コレクションや趣味の道具:家族に相談
洋服や家具、家電製品など、生活に必要なものと不要なものを分類してから、リサイクルや寄付も考慮すると決めやすくなります。
コレクションや趣味の道具は家族も迷うものなので、事前にどうして欲しいかを相談しておきましょう。
人間関係
終活では、人間関係の整理も欠かせません。死ぬまでに会いたい人や、自分の葬儀に来て欲しい人をピックアップしておきましょう。
残りの人生を一緒に過ごしたい人たちを明確にもできるため、非常に重要です。喧嘩している友人とは、終活をきっかけに関係を決めるのも良いでしょう。
もしペットがいる場合は、その後の世話先も決めておいてください。
人間関係は、人生において最も心の割合を占めるものです。事前に整理しておけば心の整理が進み、残された時間をより充実したものにできるでしょう。
クレジットや口座などの契約関係
クレジットカードや銀行口座といった、契約関係も整理が必要です。残された家族がスムーズに対応できるように、生前から対応しておきましょう。特に口座関係は手続きが細かいので、遺族の負担を軽減できます。
例えば、以下のように見直してみてください。
クレジットカードやローン:書類を整理して控えをファイリングしておく
会員証やポイントカード:不要であれば解約手続きをしておく
携帯電話やインターネットなどの契約:書面で残し、不要であれば解約
各種保険証:有効期限を確認しておく
契約関係は、ノートや書面、パソコンに残しておくと死亡後の解約手続きに役立ちます。あるなしで遺族の負担が大きく変わるので、整理しておきましょう。
パソコンやスマートフォンなどのデータ
近年はパソコンやスマートフォンも一般化しているため、デジタルデータの整理も終活の重要なポイントです。個人情報の漏洩を防ぐためにも、整理しておきましょう。
特に写真や動画、インターネットの検索履歴などは、見られたくない場合は今のうちに消しておくことをオススメします。
また、SNSアカウントは放置していると第三者に則られる可能性があります。最悪の場合、詐欺に使われて裁判沙汰になるなんてことも。
登録だけして使っていないSNSは、アカウント削除して整理しましょう。
思い出の品や写真
思い出の品や写真の整理も、忘れずにしておきましょう。遺族にとってもどう扱っていいのか迷う部分なため、事前にやっておくと負担を軽減できます。
選ぶ際は、基準を設けておくとスムーズに進められます。例えば、以下のような基準です。
良い思い出ではない
写りが悪い
なぜ残しているのかわからない
8ミリビデオなど今では読み込めないものに関しては、DVDなどにバックアップしてくれるサービスを使うのも良いでしょう。
思い出の品や写真は、身辺整理をしていると、つい手が止まってしまうものです。しかし、振り返るには最適なので、じっくりと過去を懐かしみながら作業を進めてください。
終活の身辺整理をする際に意識したい3つのポイント
終活で身辺整理をする際、意識したいポイントがあります。満足のいく身辺整理をするためにも、以下の3つのポイントは重要です。
期限を決めて進める
完璧主義にならない
家族や友人と協力する
期限を決めて進める
身辺整理は、時間をかけて少しずつ進めるものです。しかし、ダラダラと続けていると、いつまで経っても終わりません。そのため、まずは期限を決めて進めるようにしましょう。
例えば、1ヶ月で夏服を整理するなど、無理のない範囲で目標を設定してください。期限を決めれば、モチベーションも維持しやすくなります。
また、後から買ったものについても「1年間1度も使わなかったら処分」のようにルールを作っておくと、後で困りません。
期限を決めておくと身辺整理をスムーズに進められるので、ぜひ設定しておきましょう。
完璧主義にならない
身辺整理は、完璧を目指そうとすると、かえって負担が大きくなってしまいます。全てを完璧にしようとせず、ある程度割り切ることも大切です。こうあるべき、と決めてしまうと、精神的に辛くなってしまうケースもあります。
例えば、役には立たないけれど心惹かれる品を無理に処分すると、後悔してしまいます。本当に自分が好きなものや気に入っている品は、手元に置いておきましょう。
価値観や優先順位は年齢とともに変化していくので、臨機応変な対応も重要です。
家族や友人と協力する
身辺整理は、1人でする必要はありません。家族や友人にも協力を依頼し、作業をスムーズに進めていきましょう。
特に、思い出の品や写真などを整理する際に迷った場合は、家族や友人の意見も聞いてみてください。自分では思いも付かなかった解決方法が見つかるかもしれません。
一緒に作業すれば、それも楽しい思い出になります。気持ちも前向きになるため、家族や友人にも遠慮せずに協力をお願いしてみましょう。
終活の身辺整理は計画的に取り組もう
身辺整理は、単に不用品を処分するだけではありません。 財産や持ち物、人間関係などを整理し、遺族がスムーズに手続きを進められるように準備する行為です。
家族への負担軽減はもちろん、住みやすい環境を作れたり、自分らしい最期を迎えられたりと、様々なメリットがあります。
毎日少しずつ身辺整理を進め、自分と家族のために、今からできる身辺整理に取り組んでみましょう。